2006-10-31

10月の声



静寂のなか
声をきく
語ることをやめた
声に耳を澄ます
カラッポの器に
なみなみと美酒が注がれるように
声に満たされ
声のなかでたゆたう

声・・・
それは沈黙


2006-10-23

稽古場、聖域としての・・・



小さな稽古場を持っています。坂の途中の今にも崩れそうな平屋の一軒屋。二十畳程の広さをぶち抜いて板張りにしてから、かれこれ15年は経ったでしょうか。西日のあたる縁側は年々傾き、もう戸が開くのは20センチ程の隙間だけ。台風がくれば壊れるのではとハラハラし、大雨が降ればあちこち雨漏りし、汲み取り便所には水がしみ込み、隙間だらけのその家は外と殆ど気温が変わらず、夏は暑く冬は寒い。それでもそこは私の聖域で、あらゆる苦悩と歓びの生まれる場所。稽古、という魂の交歓を行う場所。

この夏私はそこに通い詰めました。時間の許すかぎり、その場で過ごした。夜も25℃を下らないような気温が続き、時々想い出したように回る扇風機と共に、殆ど熱中症になりそうななか、濡れタオルで体を冷やしながら、踊りの制作に没頭しました。この夏が最後かもしれない・・・そのような予感があったからでしょう。もうここは維持できないかもしれない、という想いが・・・。

走り続けた夏は終わり今は秋。考えるにも、動くにも、ちょうどよい季節。私は自身の奥底で何かが静かに動くのを感じます。あまりにも静かなので、それはもはや、動いているのか止まっているのか、生きているのか死んでいるのか、私なのか、あなたなのか・・・もはや・・・わからない・・・。


あらゆるものが変化して
すべてが時と共に崩れ去ってゆく
それでも壊れないものがあるだろう
時間にも空間にも惑わされないもの
そのことに心を向ける
たとえ愛するものが消え去ったとしても
失うものなどなにもない