2007-04-09

sakura

いまはなきモウゾウザクラ



以前住んでいた家は、小人の家のように小造りながら小さな中庭に面した縁側にはガタピシの木枠のガラス戸がはいり、手前は雪見障子だった。

冬、こたつで読書に疲れると、見るともなしに庭に目をやる。北陸のたっぷり水気を含んだ雪は木の枝を重く垂らし、南天の実をついばみにきた小鳥がせわしげに枝を揺らす。


さーと光が差したかとおもうと、目が痛くなるほどに白い庭は一斉に輝きだし、次の瞬間には雲天から雪、果てしなく降る雪。


その光景は、私のなかで起こっていること。庭は私の心だった。如何ともしがたい大きな力の流れ、光が一瞬にして見えるものを変える。


私は目だった。ただ見ているだけ、こころが映すその光景を。それは照ろうが翳ろうが、ただ、美しかった。


今年は雪のない冬の後に春がきた。いまは桜。季節を忘れたような冬の後の花は・・・うつくしいだろうか・・・。




・・・美は感じるものの必然性のなかにある